デジタルサイネージは、店舗や施設、オフィスなどで情報を表示できる便利な設備です。一方で、設置しただけでは、来店数や問い合わせ、社内周知にどの程度つながっているかは判断できません。
効果を把握するには、目的に合う指標を決め、表示内容や設置場所を見直していく必要があります。この記事では、デジタルサイネージの効果測定の考え方、見るべき指標、測定方法、改善の進め方を解説します。
デジタルサイネージの効果測定とは
デジタルサイネージの効果測定は、設置した画面が目的に合って役立っているかを判断する取り組みです。
まずは、効果測定の基本的な考え方を解説します。
目的に対して成果を測ること
デジタルサイネージの効果測定では、最初に「何のために設置するのか」を決めることが大切です。
たとえば、店頭で商品を売りたい場合と、施設内の案内を分かりやすくしたい場合では、見る数字が変わります。販促なら購買数やクーポン利用数、案内なら問い合わせ数、社内周知ならアンケート回答率や手続き完了率などが指標になるでしょう。
目的が曖昧なまま数字だけを集めても、改善すべき点は見えてきません。まずは「来店を増やしたい」「受付での質問を減らしたい」など、変えたい状態を具体的にしてください。
売上だけで判断しない
デジタルサイネージの効果は、売上だけで判断しないことが重要です。
売上は店舗にとって大切な指標ですが、天候、曜日、在庫、価格、接客、キャンペーンなど、さまざまな要因に左右されます。売上が上がったとしても、サイネージだけの影響とは言い切れないでしょう。
サイネージの働きを見るには、視認数、来店数、QRコードの読み取り数、対象商品の販売数なども組み合わせて見ます。売上に直結する前の行動を追うと、表示内容や設置場所の改善点を考えやすくなります。
導入前にKPIを決めておく
効果測定を行うなら、導入前にKPIを決めておきましょう。
KPIとは、目的に近づいているかを見るための中間指標です。たとえば、販促目的ならクーポン利用数や対象商品の販売数、案内目的なら受付への問い合わせ件数、社内周知ならイベント参加率やアンケート回答率が考えられます。
設置後に数字を集め始めると、導入前との比較が難しくなります。事前に基準値を取り、どの数字をどの期間で見るのかを決めてください。
デジタルサイネージの効果測定で見る主な指標
効果測定で見る指標は、サイネージの目的や設置場所によって変わります。
ここでは、視認、来店、購買、問い合わせなどの代表的な指標を紹介します。
視認数・視聴時間
視認数や視聴時間は、デジタルサイネージがどのくらい見られているかを把握する指標です。
カメラやセンサーを使うと、画面の前を通った人数、画面を見た人数、平均視聴時間などを測れることがあります。表示場所や時間帯によって見られ方が変わるため、設置位置を見直す材料になるでしょう。
ただし、視認数が多くても、来店や購買につながるとは限りません。まずは「画面が見られているか」を知るための指標として扱い、ほかの数字と組み合わせて判断してください。
来店数・入店率
店頭や施設入口に設置する場合は、来店数や入店率も重要な指標です。
サイネージを設置した前後で来店数を比べると、入口まわりの訴求が来店に影響しているかを見られます。商業施設や店舗では、時間帯別、曜日別、キャンペーン期間別に分けると傾向をつかみやすいでしょう。
来店数は、天候や周辺イベント、季節、広告出稿にも左右されます。短期間だけで判断せず、同じ条件に近い日を比べてください。
購買数・対象商品の販売数
商品やサービスを紹介するサイネージでは、購買数や対象商品の販売数を見ます。
飲食店ならセットメニュー、小売店なら季節商品、施設ならサービスの申し込み数など、表示した内容に近い行動を指標にすることが大切です。売上全体だけを見ると、サイネージの影響が分かりにくくなります。
表示内容と販売数を合わせて記録すると、どの商品紹介が反応につながったかを比べられます。価格変更や在庫状況も影響するため、同時期の施策もあわせて見てください。
QRコード・Webアクセス
QRコードや専用URLは、サイネージを見た後の反応を測る方法として使えます。
クーポン、予約ページ、商品詳細ページ、アンケートなどへ誘導すれば、読み取り数やアクセス数を記録できます。画面を見た人が次の行動を取ったかを把握しやすい点が特徴です。
チラシやSNSと同じURLを使うと、どの媒体から来た反応か分かりにくくなります。効果測定を行う場合は、サイネージ専用のQRコードやURLを用意してください。
問い合わせ数・スタッフ対応数
案内目的のデジタルサイネージでは、問い合わせ数やスタッフ対応数も指標になります。
施設案内、受付案内、院内案内、会場案内などでは、来訪者が迷わず行動できたかが重要です。たとえば、受付への質問件数、道案内の回数、同じ説明を繰り返した回数を記録すると、案内表示の効果を見られます。
専用ツールがなくても、スタッフのメモや簡単なカウント表から始められます。小規模な店舗や施設では、まず現場で記録できる数字から取り入れましょう。
目的別に見るデジタルサイネージの効果測定
デジタルサイネージは、販促、集客、案内、社内周知など目的によって効果の見方が変わります。
ここでは、目的別に見る指標を紹介します。
販促目的:購買数やクーポン利用数
販促目的では、商品やサービスの購入、申し込み、予約につながったかを見ます。
対象商品の販売数、クーポン利用数、QRコードの読み取り数、予約数などが主な指標です。たとえば、飲食店で新メニューを表示するなら、そのメニューの注文数を見ると効果を比べやすくなります。
全体売上だけを見ると、ほかの商品や外部要因の影響が混ざります。表示した内容に近い数字を追うことで、画像、コピー、価格訴求、表示時間の改善につなげてください。
集客目的:来店数や入店率
集客目的では、サイネージを見た人が店舗や施設に入ったかを見ます。
店頭や屋外に設置する場合は、来店数、入店率、時間帯別の来客数などが指標です。設置前後だけでなく、曜日別や時間帯別で比べると、どのタイミングで効果が出ているかを把握できます。
ただし、来店数は天候、周辺イベント、季節、ほかの広告施策にも影響されます。複数日や複数週のデータを取り、できるだけ近い条件で比較しましょう。
案内目的:問い合わせ数や迷いやすい場所
案内目的では、来訪者の問い合わせ数や迷いやすい場所の変化を見ます。
施設案内や受付案内では、「受付はどこですか」「トイレはどこですか」「会場は何階ですか」といった質問が減ったかを記録します。質問が多い場所にサイネージを置いたり、表示内容を変えたりすると、案内の改善につながるでしょう。
正確なデータを取るのが難しい場合でも、スタッフの記録や来訪者アンケートで傾向をつかめます。迷いやすい場所を把握し、案内文や地図の見せ方を見直してください。
社内周知:認知度や行動の変化
社内周知では、従業員が情報を知り、実際の行動につながったかを見ます。
オフィスや工場のサイネージでは、社内アンケート、イベント参加率、手続き完了率、掲示後の問い合わせ数などが指標です。健康診断の予約、研修参加、社内イベントの申し込みなど、行動に近い数字を見ると判断しやすくなります。
メールやチャットと併用している場合は、どの媒体で情報を見たかを聞く方法もあります。サイネージ単体で判断せず、社内連絡全体の中で役割を分けてください。
デジタルサイネージの効果測定に使える方法
効果測定には、専用ツールを使う方法と、既存のデータを組み合わせる方法があります。
ここでは、店舗や施設でも取り入れやすい測定方法を紹介します。
カメラやセンサーで視聴状況を測る
カメラやセンサーを使うと、デジタルサイネージの前を通った人数や、画面を見た人数を測れます。
取得できる内容は機器やサービスによって異なりますが、通行量、視認数、視聴時間、時間帯別の反応などが代表的です。設置場所や画面の向き、表示するコンテンツを見直す材料になるでしょう。
一方で、カメラを使う場合は個人情報やプライバシーへの配慮が欠かせません。画像を保存するのか、人数や属性のデータだけを扱うのか、保存期間や告知方法まで確認してください。
POSや予約データと照らし合わせる
店舗や施設では、POSデータや予約データとサイネージの表示内容を照らし合わせる方法があります。
たとえば、飲食店でセットメニューを表示した期間に注文数が増えたか、小売店で季節商品を紹介した期間に販売数が変わったかを見ます。施設やクリニックでは、サービスの申し込み数や予約数も指標になるでしょう。
ただし、売上や予約数はサイネージ以外の要因にも影響されます。キャンペーン、価格変更、在庫、スタッフ対応など、同時期に行った施策も合わせて記録してください。
QRコードや専用クーポンを使う
QRコードや専用クーポンは、サイネージ経由の反応を測りたいときに使える方法です。
画面にQRコードを表示し、商品詳細ページ、予約フォーム、アンケート、クーポン画面へ誘導すれば、読み取り数や利用数を記録できます。サイネージを見た後の行動を追いやすい点が特徴です。
チラシやSNSと同じコードを使うと、どの媒体からの反応か分かりにくくなります。効果測定を目的にする場合は、サイネージ専用のQRコードやクーポンを用意してください。
スタッフの記録やアンケートを使う
専用ツールを使わなくても、スタッフの記録やアンケートで効果を測れます。
受付への質問件数、道案内の回数、案内ミス、来訪者アンケート、従業員アンケートなどは、現場で始めやすい指標です。小規模な店舗や施設では、まず紙やスプレッドシートで記録する方法でも十分です。
大切なのは、同じ基準で記録を続けることです。記録する項目や期間を決め、サイネージの表示内容を変えた前後で比べてください。
デジタルサイネージの効果測定を進める手順
効果測定は、数字を集めるだけではなく、次の改善につなげることが大切です。
ここでは、基本的な進め方を紹介します。
目的と測定指標を決める
最初に、デジタルサイネージで何を変えたいのかを決めます。
来店数を増やす、対象商品の販売数を伸ばす、受付での質問を減らす、社内イベントの参加率を上げるなど、目的は設置場所によって異なります。目的が決まると、見るべき指標も絞れるでしょう。
指標を増やしすぎると、記録や集計の負担が大きくなります。最初は、目的に近いKPIを2〜3個に絞って始めてください。
測定前の基準値を取る
効果を比べるには、サイネージを設置する前や表示内容を変える前の数字が必要です。
来店数、問い合わせ件数、対象商品の販売数、受付での質問件数などを事前に記録しておくと、導入後の変化を比べられます。基準値がないままでは、数字が変わってもサイネージの影響か判断しにくくなります。
可能であれば、曜日や時間帯も合わせて記録しましょう。平日と休日、午前と夕方では来客数が変わるため、近い条件で比較することが大切です。
表示内容と期間を記録する
どのコンテンツを、いつ、どこで、どのくらい表示したかを残しておきましょう。
表示期間や時間帯が分からないと、来店数、購買数、問い合わせ数との関係を見にくくなります。複数のコンテンツを流す場合は、配信スケジュールや表示順も記録しておくと比較しやすいです。
記録は複雑な形式でなくても構いません。表示内容、設置場所、期間、見た指標を表にまとめるだけでも、次回の改善に使えます。
結果を見て表示内容を改善する
測定結果は、次に表示するコンテンツを改善するために使います。
視認数が少ない場合は、設置場所、画面の向き、文字サイズ、表示時間を見直します。QRコードの読み取りが少ない場合は、誘導文、コードの大きさ、表示位置、表示秒数を調整するとよいでしょう。
問い合わせが減らない場合は、案内文が分かりにくい、設置場所が合っていない、必要な情報が足りないといった原因が考えられます。数字を見て終わらせず、次の画面づくりに反映してください。
効果測定で注意したいこと
デジタルサイネージの効果測定では、数字の見方を誤ると判断を間違えることがあります。
ここでは、測定時に注意したいポイントを解説します。
短期間の数字だけで判断しない
デジタルサイネージの効果は、1日や数日だけの数字では判断しにくいものです。
来店数や売上は、曜日、天候、周辺イベント、キャンペーン、スタッフ体制などの影響を受けます。たまたま来店が多い日や少ない日だけを見ても、サイネージの効果とは言い切れないでしょう。
効果を比べるときは、複数日や複数週のデータを見てください。平日同士、休日同士、同じ時間帯同士など、できるだけ近い条件で比較することが大切です。
サイネージ以外の要因も見る
来店数や売上を見るときは、デジタルサイネージ以外の要因も合わせて考えましょう。
たとえば、価格変更、在庫状況、SNS投稿、チラシ配布、店頭POP、スタッフの声かけなども結果に影響します。数字が上がった場合でも、サイネージだけが理由とは限りません。
表示期間中に行った施策を一緒に記録しておくと、結果を振り返りやすくなります。数字の増減だけで判断せず、同じ時期に何を行ったかまで見てください。
個人情報やプライバシーに配慮する
カメラやセンサーを使って効果測定を行う場合は、個人情報やプライバシーへの配慮が欠かせません。
顔画像を保存するのか、人数や属性を推定するだけなのか、取得するデータの内容によって必要な対応は変わります。データの保存期間、管理方法、利用目的も事前に決めておきましょう。
来店客や来訪者に不安を与えないためには、必要に応じて掲示で告知することも大切です。導入前には、社内の情報管理ルールや利用するサービスの仕様を確認してください。
測定項目を増やしすぎない
効果測定では、取れるデータをすべて見る必要はありません。
視認数、来店数、購買数、問い合わせ数、QRコード読み取り数などを一度に追いかけると、担当者の記録や集計の負担が大きくなります。数字を集めても、改善に使われなければ意味が薄れてしまいます。
最初は、目的に近い指標を数個に絞ってください。運用に慣れてから、必要に応じて測定項目を増やす流れがよいでしょう。
効果測定を改善につなげるポイント
効果測定は、結果を確認して終わりではありません。
集めた数字をもとに、表示内容や配信方法を見直すポイントを紹介します。
コンテンツごとに結果を見る
複数のコンテンツを流している場合は、全体の数字だけでなく内容ごとの反応を見ましょう。
どの商品紹介でQRコードが読まれたか、どの案内を出した後に問い合わせが減ったかを比べると、反応の出やすい内容が分かります。逆に、長く表示しているのに反応が少ないコンテンツは、見直しの対象です。
文字量、表示時間、画像、誘導文、QRコードの位置などを一つずつ変えてください。一度に多くの要素を変えると、どの変更が結果に影響したのか分かりにくくなります。
時間帯や設置場所で比べる
同じコンテンツでも、時間帯や設置場所によって反応は変わります。
飲食店ならランチ前、商業施設なら夕方、オフィスなら出社時や昼休みなど、見られやすい時間があります。入口、レジ前、待合室、共有スペースなど、設置場所によって人の動きも異なるでしょう。
時間帯別や場所別に結果を比べると、配信スケジュールや設置位置を調整しやすくなります。反応が弱い場所では、画面の向きや高さも見直してください。
A/Bテストで表示内容を比べる
表示内容を改善するには、A/Bテストも役立ちます。
A/Bテストとは、2つのパターンを用意して反応を比べる方法です。たとえば、画像違い、コピー違い、QRコードの位置違い、表示時間違いなどを比較できます。
比較するときは、変更点を1つに絞ることが大切です。画像とコピーと表示時間を同時に変えると、どの要素が反応に影響したのか判断しにくくなります。
定期的に見直す日を決める
効果測定は、導入直後だけでなく定期的に続けることが大切です。
月1回、キャンペーン終了後、季節商品の切り替え時期など、見直す日を決めておくと運用に組み込みやすくなります。担当者が思い出したときだけ確認する形では、改善のタイミングを逃してしまうでしょう。
見る指標、表示していた内容、改善した点を簡単に記録してください。担当者が変わっても過去の判断を追えるようにしておくと、デジタルサイネージの運用を続けやすくなります。
まとめ:効果測定は目的に合う指標から始めよう
デジタルサイネージの効果測定は、設置した画面が目的に合って機能しているかを見る取り組みです。視認数、視聴時間、来店数、購買数、問い合わせ数、QRコード読み取り数など、見るべき指標は目的によって変わります。
売上や来店数だけで判断すると、天候、曜日、キャンペーン、接客、在庫などの影響が混ざりやすくなります。販促、集客、案内、社内周知など、サイネージを使う目的に合わせて、複数の指標を組み合わせてください。
まずは、何を改善したいのかを決め、測定前の基準値を取るところから始めましょう。小規模な店舗や施設では、QRコード、スタッフ記録、アンケートなど、現場で続けられる方法から取り入れることが大切です。


