デジタルサイネージ導入で使える主な補助金の種類
デジタルサイネージ導入時に中小企業・小規模事業者が利用できる代表的な補助金制度として、以下の3つが挙げられます。
いずれも国が主体の制度で中小企業や小規模事業者を対象としており、要件を満たせば機器購入費やコンテンツ制作費など経費の一部について補助を受けられます。
小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、地域の小規模事業者が販路開拓や経営基盤の強化を目的として導入する際に活用できる補助金です。
導入費用の3分の2が補助され、上限額は通常枠なら50万円、特別枠なら250万円になります。比較的少額のデジタルサイネージ導入に適しており、店舗の集客力向上や地域へのアピールを目的とする場合に利用されることが多いのが特徴です。
申請時には経営計画の提出が必要で、導入目的や期待する効果を明確に示すことが求められます。
小規模店舗や個人事業主に特におすすめの補助金といえるでしょう。
参考サイト:https://r3.jizokukahojokin.info/index.php
IT導入補助金(デジタル化基盤導入枠)
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者が業務効率化や生産性向上のためにITツールを導入する際の補助金です。
この補助金には「通常枠」と「デジタル化基盤導入枠」など複数の類型があります。
デジタルサイネージ導入の場合は、主に「デジタル化基盤導入枠」が対象となり、補助率は導入費用の2分の1〜最大4分の3、補助金額は最大450万円までとなっています。
通常枠は主にソフトウェア導入を対象としており、ハードウェア購入費用は対象外となるため注意しましょう。申請には導入計画書の提出やITツールの登録が求められるため、事前準備が重要です。
規模の大きい導入にも対応可能で、店舗や施設での活用におすすめの補助金です。
参考サイト:https://it-shien.smrj.go.jp/
ものづくり補助金
ものづくり補助金は、中小企業が革新的な設備投資や新サービス開発に取り組む際に活用できる大型の補助金制度です。
補助率は原則1/2で、小規模事業者等一定の場合には2/3まで引き上げられます。2025年度現在の補助上限額は応募する枠によって異なりますが、通常枠で最大3,500万円程度、海外展開を伴うグローバル展開枠等では最大4,000万円と非常に高額です。
対象となる取組内容も高度で、業務プロセスの抜本的な効率化につながる機械装置の導入や、自社の新製品・新サービス開発のためのシステム投資などが主眼とされています。
デジタルサイネージ導入についても、先進的な活用方法であれば補助対象になり得ます。
たとえば「高精細ディスプレイとIoTセンサーを組み合わせて新たな顧客体験サービスを提供する」あるいは「サイネージと社内業務システムを連動させて業務を自動化する」といった高度な取り組みであれば、機器購入費やソフトウェア開発費が補助金の支援対象となる可能性があります。
参考サイト:https://portal.monodukuri-hojo.jp/
デジタルサイネージ導入で活用可能なその他の補助金は?
デジタルサイネージ導入には、インバウンド対策や省エネ対策、防災目的でも活用可能な補助金があります。
導入目的別に活用できる補助金の概要を解説します。
インバウンド・観光施設向けの補助金
「地域観光魅力向上事業」は、観光庁が主体となり、地域の観光地や観光施設の魅力を向上させることを目的とした補助事業です。
インバウンド(訪日外国人)への対応強化として、多言語対応のデジタルサイネージ設置や、観光案内表示の整備なども対象になります。
観光施設や地域全体の利便性向上、外国人観光客の誘致促進を目的とした事業計画を立てることで、導入費用の一部が支援されます。
省エネ対策に活用できる補助金
「地域脱炭素推進交付金」は、環境省が推進する、脱炭素社会の実現を目指した補助事業です。
省エネ性能の高い設備や再生可能エネルギーの導入に対して、費用の一部が交付されます。
省電力のLED型デジタルサイネージなどの設備も対象となっており、地域の脱炭素化と省エネ促進に役立つのが特徴です。
事業計画や設備仕様などが交付条件となるため、事前に詳細な計画を立てて申請する必要があるでしょう。
参考:https://www.env.go.jp/content/000267785.pdf
補助金申請の前に確認すること
補助金を活用してデジタルサイネージを導入する際は、いきなり申請に入るのではなく、事前に以下の3つのポイントを確認しておくことが重要です。応募資格や対象経費、補助金の条件を理解しておくことで、スムーズな申請と確実な採択につながります。
事業者・団体に求められる要件を満たすかを確認する
補助金には、対象となる企業規模や業種などの要件が定められています。たとえば「小規模事業者持続化補助金」の場合、常時使用する従業員が5人以下(商業・サービス業)など、小規模事業者の定義を満たしている必要があります。
一方で「ものづくり補助金」や「IT導入補助金」は中小企業全般が対象ですが、大企業の100%子会社などは除外されることも。必ず公募要領を確認し、自社が該当するかを事前にチェックしましょう。
導入する機器・用途が補助対象に該当するかを確認する
サイネージ導入が補助対象となるかどうかも重要な確認事項です。
たとえば、中古機器の購入や一般PCの転用は補助対象外となるケースが多くあります。また、単に社内掲示用として使うだけでは対象外とされる場合もあります。
一方、販促やIT化、業務効率化など、補助金の目的と合致すれば対象となる可能性が高くなります。導入予定の機器や費用(本体、ソフトウェア、工事、コンテンツ制作など)がすべて補助対象か、事前に要項や事務局に確認しておきましょう。
補助率や交付上限額の条件を確認する
補助率(補助金が出る割合)や上限額も制度によって異なります。たとえば補助率が2/3で上限50万円の場合、実際に補助されるのは最大50万円までとなります。
自己負担額や必要資金をあらかじめ試算しておくことが大切です。また、条件によっては補助率や上限額が引き上げられる特例もあります。
ただし、特例を活用する場合には追加の書類提出や報告義務が課されることも。さらに補助金は原則「後払い」なので、交付までの資金繰りも含めた計画を立てておきましょう。
補助金申請から交付までの主な流れは?
補助金を活用するには、申請から交付までの流れをあらかじめ理解しておくことが大切です。以下では、代表的な補助金に共通する基本的な流れを紹介します。
事前準備・申請書の作成を行う
まずは希望する補助金の公募要領を入手し、要件を確認しましょう。そのうえで、目的や導入内容、期待される効果などを記載した事業計画書を作成し、見積書や資金計画、必要書類も準備します。
補助金によっては事前に商工会への相談が必須だったり、ITベンダーとの連携やGビズID取得が必要なケースもあるため、余裕をもって準備を進めることが大切です。
審査・交付決定が行われる
申請後、事務局による審査が行われ、採択・不採択が決定されます。採択された場合、次に交付申請を行い、正式に交付決定が通知されたのちに補助事業をスタートできます。
注意点として、交付決定通知を受け取る前にサイネージを発注・購入した場合、その費用は補助対象にならないため、契約は通知を待ってから行いましょう。
実績報告と補助金交付を受ける
事業が完了したら、導入内容や支出額を記載した実績報告書を提出します。請求書や領収書、写真など証拠書類を添えて事務局へ提出し、内容が確認され問題がなければ補助金が支払われます。
支払いは銀行振込で行われ、通常は報告受理から数ヶ月後になります。全体の流れを理解しておくことで、スムーズな申請・交付が可能になります。
補助金を活用する際の注意点は?
補助金は有効な資金支援制度ですが、公的な制度である以上、申請や運用には守るべきルールや注意点があります。ここでは、補助金を活用する際に特に押さえておくべき3つのポイントを解説します。
補助金交付後の運用ルールを遵守する
補助金を受け取ったあとは、補助事業の目的に沿った運用を継続しなければなりません。たとえば、購入したサイネージ機器は一定期間は転売や転用が禁止されており、帳簿での管理や保管義務もあります。
また、補助事業が完了した後も、報告書提出や成果報告などの義務が課される場合があるため、交付決定通知に記載されている条件をよく確認し、適切に対応することが求められます。
申請期間やスケジュール管理を徹底する
補助金には公募期間や申請締切が明確に設定されています。締切を過ぎると申請できなくなるため、スケジュール管理が非常に重要です。
書類作成や関係機関とのやりとりには想像以上に時間がかかる場合があるため、余裕をもって準備を進めましょう。
また、交付決定後も事業完了や実績報告の提出期限が設けられており、これを過ぎると補助金が受け取れないこともあるため注意が必要です。
補助金対象外となるケースもある
どんな経費でも補助対象になるわけではありません。中古機器の購入、既存設備の単なる更新、または個人的な利用が主目的の場合などは対象外となるケースが多く見られます。
公募要領に記載されている「補助対象経費」と「対象外経費」の項目を事前に確認し、導入を予定している機器やサービスが補助の対象となるか慎重に判断しましょう。
不明な点は、事務局や地域の商工会議所に相談することをおすすめします。
まとめ
デジタルサイネージの導入にあたっては、複数の補助金制度を活用することで初期費用を大幅に抑えることが可能です。
申請前には、自社の事業規模や導入内容が要件を満たしているか、補助対象経費に該当するか、補助率・上限額などの条件をしっかり確認することが重要です。申請から交付までは計画書の作成・審査・実績報告と段階的な手続きが必要で、特にスケジュール管理と運用ルールの遵守が成功の鍵となります。
適切な準備と運用を行えば、補助金はデジタルサイネージ導入を後押しする非常に有効な支援策となります。